2012年にリリースされた素敵なドラムンベースまとめ

今年も良い物が生まれたので、今年も書くことになりました。(口上)

去年書いた記事のおかげか、今年からドラムンベースに興味を持った人が増えたり、アクションがあったりと書いた本人として嬉しく感じる1年でした。

YsK-与作が主催するサークル、Diverse Systemでもドラムンベースコンピレーション「AD:DRUM’N BASS」を出したりと同人音楽にも少しずつ動きがありました。今後も開拓の余地がある、というよりも余地しかない世界を、私という個人の視点から紹介できたらと思います。
(ステマしたのでお金ください>主催)

日本国内で今流行っているものもありますが、あくまでも今年リリースされた本場のもので、素晴らしいものを紹介したいと思います。


今年はどんな年だったか

枯れた中に、鋭さを持つ素晴らしいトラックが多く登場した年でした。

大局的には、3つの柱で成り立っていました。
・楽器数の少ない「ミニマル系」。
・ジャングルに立ち返った物。
・リアルなドラムのサンプリングを使った、LIQUID FUNK系。

ロックやエレクトロ系の音を多用したviper系は良質なトラックをリリースするも、流行としては多少押され気味という感じでした。

昨年の予想ではicicleが大旋風を巻き起こす、と予想していましたが蓋を開けてみたら群雄割拠の様相を呈していました。

Calyx & TeeBee – Elevate This Sound (Official Video)
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=epsUfFZ5i6Y[/youtube]
今年で最も素晴らしいトラックを作ったのは間違いなくCalyx & TeeBeeでしょう。最低限の音で、burialのような幽玄の世界。そして下品になり過ぎない甘みのあるメロディによって今年の流行を汲み取り、美しいものを作りました。今年は「静と動」で言うならば前者を追い求めていました。

今までの「静」はlondon elektricityやNuToneなどのhospitalにあるようなアコースティックを基調とした「静」しかありませんでした。
人工的な音を使って新たな境地に可能性を見つけた今年、大勢のアーティストがこの流れを追いかけていったのも特に目を引きました。

2013年も、この系統がしばらくアンダーグラウンドでも中心的なサウンドになると予想されます。

ミニマルとアンダーグラウンドの関係

そして今年はよりハードコアに、「何を引いてしまえばジャンルとして成立しなくなるか」というのを求めるような作品が多くありました。
これについての考えは非常に恣意的な解釈になりますが・・・。

メインストリーム系のクラブミュージックとは「多くの人が求める形に音楽を作り変える」形式で成り立つものと個人的に考えています。一方で、アンダーグラウンドでは「誰かのためではなく、骨組み全てを解体しても残るもの」を、シーンは評価し続けているのではないかという感覚がありました。

そういう意味では最終的には現段階の答えとして、各所で盛り上がった「bassmusic」という言葉のようにドラムではなく、ベースが刻むリズムによってこの音楽ジャンルが成立しているという意識の動きを多く感じる事がありました。

それは以前、紹介した「Dub Phizix and Skeptical feat Strategy – Marka」のような、到底ドラムンベースとは思えないものでもDNBAのチャート1位として受け入れられたのも私自身を納得させる材料になっています。

以下は、それらの動きの中で生まれてきただろう、音楽です。

Mefjus – Far Too Close
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=oGuJypZCYrM[/youtube]
neurofunk系の楽曲を多く出していたMefjusによるミニマルトラック。重厚的な音ではないドラムで作られた攻撃的なトラックとは何かというのを提示した作品です。

Mefjus – Mix for Powder and Bass 2012
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=qg2daNiuO_E[/youtube]
ミニマル系の良さが詰まった、彼によるDJmixです。ミニマル系の無機質なビートと彼のキャリアのバックグラウンドにある、neurofunkの流動的な展開が非常に聞いてて楽しいものです。クラブで鳴ってても踊るにも良い内容です。

Enei – Machines
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=P1vWvzK_rRY[/youtube]
Mefjusと同じレーベルCritical Musicに所属する今年はロシア人アーティスト、eneiのアルバムも発売されました。2012年はamenのサンプルを前面に押し出した作品を出して、オールドスクールらしさを印象づける作品を多く作りました。

Drum & Bass : SKisM – Red Heat (TC Remix)
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=cfYSwVP3W_U[/youtube]
これは非常に今年リリースされた曲に多い、「ドラムは生音系」「音色を多くたたみかけるサウンド構成」と流行とは何か、というのを実によく捉えています。

Drum & Bass : TC – Drug FuCT (Official Video)
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=SaKb4hLmTA0[/youtube]
この辺りになってくると完全に、タイトルの通り「とある」カルチャーとの融合した方向性になっています。たまに、あまりにも理解できない常軌を逸したトラックも出てくるのですが、そういう場合はこのカルチャーによって支持されている音楽だと割り切る事にしています。

メインストリーム

アンダーグラウンドに突き上げられても平伏すること無く、着実な音源がリリースされました。

DJ Fresh – ‘Nextlevelism’ (Album Trailer) (Out Now)
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=K_Q6Lrj1dXs[/youtube]
個人的には、メインストリームとしてはDJ freshがリリースしたこのアルバム「nextlevelism」は絶対に外せないでしょう。基本的に歌モノのポップチューンしか入ってないという鉄板以前に、個人的には去年でも紹介したlouderがlive版で収録されています。この曲で特筆すべき所は、オープニングがアコースティックギター一本だけで歌い上げる展開で、あまりの格好良さに泣きそうになりました。

ドラムンベースを知らない以前に、ボーカルが入ってない音楽を音楽を認めない人に対してもアプローチ出来る、オススメできる名盤です。

Sub Focus – Out The Blue ft. Alice Gold
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=tQQVgZhGc2M[/youtube]
Sub Focus – Tidal Wave ft. Alpines
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=B8vlk1UR99k[/youtube]
昨年は殆ど表に出て来なかった印象のあるsub focusが、彼らしいトラックを久々にリリースしました。tidal waveは特にコード進行、メロディが定型化しやすく、表情が硬くなりがちなシーンに恍惚感の有るドラムステップとして映えたのが印象に残りました。

Goldie – Freedom (Ft. Natalie Duncan) (Official Video)
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=72YaaQnj9MI[/youtube]
歴史的な出来事としては老舗レーベルのMetalheadzが今年で100枚目のEPを発行しました。今のメインやアンダーグラウンド関係なく、彼独特の路線で音数の多さや音色がどことなくジャングルやオールドスクールレイブを彷彿とさせる、確固たるスタンスを感じる作品でした。

Neurofunkトラック

Neurofunkは最近だと、ドラムンベースよりも様式美を重んじる音楽ジャンルのような感じがしています。というのも音楽的にサビが有るような展開は決まったものはそれほどなく、決まった音色によって自由に展開していき、更に別の曲へを繋ぐことで、このジャンルは成立していくのではないかと感じる機会が多くありました。

そのため、neurofunkはDJmixをした時に初めて完成する音楽ではないかと考えるようになって来ました。

Spor – Ziggurat
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=VNT-7UEIqMg[/youtube]
2011年は全く活動していなかったSporも去年は久しぶりにリリースしました。傑作Aztecや1up等をリリースした後に2010年頃からトーンダウンしていたのですが、彼独自の「ムチムチっと濃い」サウンドがまた聞けるようになりました。

Aeph – Highway Thirteen
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=6nxt2lZ9A1k[/youtube]
sporと同じレーベル、liftedからリリースされたAephのサウンドです。DJがmixする時にドラムンベースとneurofunkの繋がりを自然にするような構成になっており、切り替えスイッチとして非常に明快なポイントになる「使えるトラック」として成立しています。

Black sun Empire – From the shadows
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=-rULmvm48_o[/youtube]
同じオランダの地の繋がりか、Noisiaとの合作をすることで、深い交流を経て彼らに元々あった疾走感にNoisiaによる強烈なインパクトが加わったアルバムが今年はリリースされました。

彼らの軽快なシンセに、対向するNoisiaの暴力的なベースラインが絡み、表現力の過剰とも言えるような恐ろしいアルバムでした。今までのBSEに共通していた「流して聞ける」という軽さの中で、恐ろしさというか、新しさを見ました。

Forbidden Society – RESIST THE PRESSURE [ FSRECS 008 ]
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=2qB-yYQkLms[/youtube]
Forbidden Societyも2012年にツアーで日本でプレイしました。「4つ打ち以外のハードコア音楽とは?」という問いに対し正面から答えている、象徴みたいなスタイルが非常に格好良いです。soundcloudにも日本でプレイした時の音源があり、これもまた聞く価値があります。

UKF、DNBA以外のチャネルの動向

Liquicity Yearmix 2012 – Maduk
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=HW-heSo9580[/youtube]
UKFやDNBAとは少し重なり、そして若干違う色合いを見せるLiquicityの2012を振り返るmixです。UKFなどでは紹介されなかった作品なども多くあり、聞き所が多くあります。リスニング寄りの選曲が多い内容になっているため、作業中に聞く音楽には良い仕上がりになっています。

Drum & Bass : Mix Xilent
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=-Wd8QWDdyJw[/youtube]
日本でも知られる機会が多くなってきたXilentは自分独自の音楽の特徴を「Ultrafunk」と定義付け、注力して活動していました。「壮大なイメージの旋律」「まるでカットアップのような、つんのめるドラム」「極端なサイドチェインエフェクト」などによる技法で、複雑に構成された曲は日本人にも受け入れられているようです。

日本のドラムンベースについて

個人的な意見ですが2012年の現在で、世界レベルで胸を張って面白いイベントといえるのはDJ Akiによる「06S」だと思います。
世界の流行をとりおさえたゲストを日本に招聘して、ドラムンベースだけで夜中踊り明かす定期的に開催する大きなパーティーはこれ以外は殆どありません。
主催者側や来てる人も何かドラムンベースが好きで分かっている、コアな人が多く集まっている良いイベントだと思います。
一つのジャンルに大混雑するほどの熱狂ぶりは、見る価値があります。

逆に色んな流行のジャンルで踊りたい、ただただパーティーで暴れ倒して遊びたい、とりあえず女の子を引っ掛けたい、みたいな遊びたい気持ちだけだとあんまり楽しくないかもしまれせん(笑)

PV・ビジュアルについて

音楽の話題から少し外れてしまいますが。

ビジュアルについても(一方的ですが)仲良くさせていただいている、Taiyo Yamamoto、HARDLOVE(敬略)を代表する日本人の映像作家が制作した映像が、世界的に比肩するクオリティの作品を量産したのも、今年において個人的には触れておきたい話題です。

[vimeo]http://vimeo.com/38854945[/vimeo]
[youtube]http://youtu.be/aYDIWj00Su4[/youtube]

というのも今年は、ドラムンベース楽曲のPVも、デジタルアブストラクト作品が多く集まってきました。

The Upbeats – Diffused (Official Video
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=p3sHs3zk7Rs[/youtube]

Neonlight – Computer Music (Official Video)
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=9QZ2ZvueDbA[/youtube]

今年以降は、日本の映像作家がいつ、どこかのレーベルでも映像作品として起用・活躍してもおかしくない時期が来たと感じています。
(割と関係ないと思わせる話題をぶっこむ感じが本当にステマっぽいのでお金ください>各位)

最後に

古い情報を重宝して鵜呑みにするのではなく、今起きている情報を通じて世界が広がりますように。

2013.01.14 / Category : 未分類